第四回・混沌に踏み出す一歩『女はみんな生きている』 | 世界と日々と君と僕

第四回・混沌に踏み出す一歩『女はみんな生きている』

 どうして僕たちはしばしば、人生に転機を求めてしまうのだろう。どうして僕たちは、流されることに抵抗してしまうのだろう。それは決して簡単なことじゃないのに。


 僕は今、そんな気分を抱えている。何かを抱えて生きるのは、忘れたり考えないで生きるよりはるかに難しい。苦しみはどこかに置いていく、そんな機能が多分生きるためのメカニズムにあらかじめ組み込まれているのだ。


 主婦エレーヌの転機は、違った人生への同情と、その同情が自分にも向けられたものだったことに気が付く、共感がもたらしたものだった。
 エレーヌは確かに自分で選択して生きてきたのかもしれない。その選択が正しいかどうか、わかるはずもないけれど、今いる場所に違和感を覚え始めたら、海辺の別荘に一軒家を買って、女同士で暮らすのも悪くない。
 フランス語での原題は「Chaos」、つまり混沌だ。混沌はラストシーン、それぞれの女たちが見せる表情にこめられている。特におばあさんの表情は格別だ。どんな顔をしていたのか気になった読者諸兄は、各々の目で確認してもらいたい。素敵な勇気をもらえると思います。


 コメディータッチで描かれるのに筋は結構グロい。だが脚本のセンスだろうか、それらが違和感なく混ざり合っている。毒の効いた笑いで二時間を飽きさせない作品であったが、その点に多少不満を感じてしまったといったら贅沢すぎるだろうか。まあコメディーなので、と言ってしまえばそれまでですが。 


 フランス語もけっこういいものだなあと、英語にかぶれた脳を疎ましく思いつつ、僕のブログ第四回は幕を閉じるのであった。